隠れ脳卒中・新めまい検査と診療

無症候性脳梗塞と微小脳出血について

 無症候性脳梗塞とは目立った症状がないがMRI/CT検査で発見された脳梗塞のことを言い、隠れ脳梗塞とも呼ばれます。また、同じように、微小脳出血は目立った症状がないがMRI(T2*強調画像)検査で発見された小さな脳出血のことを言います。
 無症候性脳梗塞も微小脳出血も、次に運動麻痺などを伴う本格的な脳梗塞や脳出血を生じるうる危険なサインであり、血管性認知症などの障害が残る可能性もあります。微小脳出血は、アルツハイマー型認知症をはじめとした認知症との関連も報告されています。そういう観点からも、この2つの病気を見つけることは脳卒中予防において大切です。
 無症候性脳梗塞や微小脳出血は、厳密には目立った症状がないのですが、何かしらの症状でお悩みの患者様が多いように思います。例えば、頭痛、手足のちょっとしたしびれ、回転性・浮動性めまいの症状、頭や耳がぼーっとするという曖昧な症状、目がかすむ、見えづらいといった視覚に関する症状など、軽微な症状を自覚し、脳卒中と直接関係が無さそうに思われる症状を訴えられるように思います。
 「脳卒中が心配です」「脳卒中予防をお願いします」といって受診される患者様について、診察と検査を行い、適切に治療や指導を行うこと、これは当院の目標の一つです。
 しかし、今までの経験からしますと、めまい症状など、何かしらの症状を持っておられて、確認のためにMRI/CT検査をしましたところ、脳梗塞や脳出血(無症候性脳梗塞、微小脳出血を含む)を認め適切な治療に繋がった経験が少なからずございます。
 誤解を生じないために申し添えますが、症状があるからと言って、やみくもにMRI/CT検査することを勧めることは致しません。
 樋󠄀口内科医院では、脳神経内科専門医が神経学的診察(軽微な異常所見がないか診察することです。)を行い、症状に応じて当院で可能な検査*¹を行い、そのうえで頭部MRI/CT検査が必要かどうか判断致します。ご心配な症状がございましたら、当院を受診して下さればと思います。
 *¹当院で可能な検査:電気眼振図検査(めまいの検査)、頸動脈エコー検査、ABI/PWV検査(動脈硬化を調べる検査)、24時間ホルター心電図検査、睡眠時無呼吸症候群の検査、認知機能検査、その他通常検査として採血検査・尿検査・心電図検査・レントゲン検査・腹部エコー検査などになります。

めまいの診療に注力します

 めまい症状に悩まれておられる患者様が多い様に思います。めまいは漢字では「目眩・眩暈」と目にまつわる字を当てられます。「めまい」と「眼球運動(目の動き)の異常」には関連があると考えられている証拠だと思います。
 めまいは様々な原因で生じるので、的確に診断することが難しい症状でございます。例えば、眼球運動に関わる動眼神経などの脳神経の異常、平衡感覚に関わる前庭神経の異常、三半規管や中耳炎など耳や耳周辺の異常、追視(目でものを追いかけること)が上手く出来ないといった特徴的な眼球運動の異常を生じる大脳・小脳・脳幹の異常、など他にも多々あります。これらの中には脳卒中が隠れている患者様もいるので、神経学的診察(めまいに焦点をあてた診察を含む)や電気眼振図検査(めまいの検査)、そしてMRI/CT検査は有効です。しかし、脳卒中以外にも、パーキンソン病や進行性核上性麻痺といった、身体が動きにくくなる神経変性疾患(いわゆる神経難病やそれに類する病気)の中には、主に追視(目でものを追いかける)時に特徴的な眼球運動の異常を生じ、めまい症状を感じる患者様もおられます。欧州の国では眼球運動の異常でパーキンソン病を始めとする神経変性疾患を、その主たる症状である歩行や動作が鈍くなるといった眼球以外の運動症状を自覚する前に、眼球運動の異常を察知し早期発見・早期治療に繋げたいといった、挑戦的な試みもあります。私はそこまでの確証はまだ得られていないと考えていますが、いずれにしましても、めまいと眼球運動の異常、眼球運動の異常と大脳はじめとする脳の異常、めまいと眼球運動の異常と脳卒中・パーキンソン病をはじめとする神経変性疾患の間に関連がある場合もあるのだろうと、考えています。
 そこで、当院はめまいの患者様のお役に立ちたいと思い、めまい診療に注力し、めまい症状の原因精査と治療を目標に、電気眼振図検査*²(めまい検査)を行います。めまいで悩む患者様は多いと思いますが、なかなか原因追及まで至ることは少ないと思います。当院は脳神経内科専門医が行う神経学的診察に加えて、電気眼振図検査*²(+簡易的な聴力検査)そしてMRI/CT検査を組み合わせて行うことで、より確実に診断と治療につなげます。
 めまい症状で悩まれる患者様にとっても、脳卒中をご心配されている患者様にとっても、体が動きにくくなるパーキンソン病を始めとする神経変性疾患をご心配されている患者様にとっても、脳神経内科医としてお役に立てることではないかと考えております。
*²電気眼振電図検査はめまいに関する検査です。目の動きを検査することで、めまいの原因が「大脳、小脳、末梢神経、耳」にあるのか調べる検査のことです。

専用VRゴーグルを用いためまい・神経疾患に対応した検査

電気眼振図検査

*電気眼振図検査(めまい検査)を当院では専用VRゴーグルを用いて検査します。

  1. 当院では専用のVRゴーグルを使って簡単にめまい・神経疾患に対応した検査ができるようになりました。
  2. 当院では簡単にめまい・神経疾患患者様向けの検査ができるよう、新しい検査機を導入しています。

電気眼振図検査

 めまいの原因は脳の病気、神経・血管系の病気、耳の病気が多いと言われていますが、心因性・ストレスなど他にも原因は様々です。
 めまいが起こると目の動きに変化が見られるため、患者様の目の動きを観察することも大切な検査の1つです。

電気眼振図検査

 当院ではVRゴーグルを使用した検査機器で患者様の目の動きから原因を探っていくことが可能です。
 また、神経疾患では経時的な変化を見ていくことも大切です。

電気眼振図検査

 この検査機器では検査初回からの変化を定量的に観察することができるため、患者様のフォローアップに役立てることができます。
 数分間ゴーグルを被るだけで簡単に検査ができますので、気になる方はお声がけください。


*なお、当検査は感染症対策などの観点から、当面のあいだ予約制とさせて頂きます。めまい症状などで当検査を希望されるかたは、問診や診察のときに看護師または医師におはなしください。